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機械式時計とクオーツ式時計の違い

フランクミュラーの時計は機械式とクオーツ式の2タイプが存在する。双方にメリットとデメリットがあるが、水晶振動子や液晶に寿命があるクオーツ式より、修理できる機械式の方が工芸品的価値は高く、価格も段違いに高価に。ここではその基本的な違いなどについて紹介する。

機械式時計とクオーツ式時計の違い

機械式時計とは

ゼンマイがゆるむ力を利用して機械パーツだけで時間を刻む時計

リューズを巻いたり時計を動かしたりなど、巻き上げられたゼンマイがゆるむ力を動力源にしてたくさんの歯車がその動力をもとに動いて時を刻むものを機械式と呼ぶ。内部のムーブメントはICチップや電池を使わずに、機械部品だけで構成されている。ほとんどのフランクミュラーはこの機械式。また、機械式時計は「手巻き式」と「自動巻き式」に分けられる。

ゼンマイがほどける力を調速しながら針を動かす

ゼンマイを動力とし、脱進機によって針の動きを制御するのが機械式時計。ゼンマイは、リューズによって巻き上げられて、力が蓄えられる。このゼンマイが元に戻ろうとしてほどける力が輪列(歯車機構)を回して、時計が駆動する。

だが、そのままではゼンマイは瞬時にほどけ、猛スピードで輪列が回転するため脱進機と調速機で輪列の回転を制御。これにより、歯車の軸に取り付けた針が、それぞれ正しい時刻を示しながら動く。

機械式時計は動力源によってさらに2つに分類される

自動巻き

自動巻きとは腕の動き、振動でゼンマイが巻き上がる仕組みのものを指す。フランクミュラーの多くの現行品は多くが自動巻で、1日8時間ほど腕に着ければ、丸1日から2日動く。ただ何日か経てば止まってしまうため、その際は時間を合わせて腕に付けていればいい。

手巻き

手巻き式は、読んで時の如く、ゼンマイと連動したリューズを指でつまんで巻き上げる方式の物。ゼンマイがゆるむ力で時間を刻むのは、自動巻きと同じ

自動巻き

ヴァンガード クロノグラフ

自動巻きはローターと呼ばれる半円形の部品が腕の動きによって回転し、その回転力を利用して時計が自動的にゼンマイを巻き上げる方式

手巻き

ロングアイランド デイト

リューズを回してゼンマイを手動で巻き上げる。

機械式時計の機能にはこのようなものがある

機能 内容
トゥールビヨン 装着時の姿勢差により、時計内部の部品が受ける重力は不均一となり、精度が悪化する。対策として、調速・脱進機構を収めたケージごと回転させ、重力の影響を均一化する複雑機構がトゥールビヨン。
特殊機能 文字盤の芸術的な作り込みや、機械式ならではの工芸品的な価値を追求した時計も存在する。機械部品だけで文字盤に太陽系の軌道を再現したロマンあふれる作品だ。
カレンダー表示 スケジュール管理には必ず日付が関わるので、デイト表示は日常使用に便利。曜日付きのデイデイトならビジネスでも心強い。ただし、止まった機械式をたまに着用するだけなら、日付調整が意外と面倒だ。
ダイバーズ 水中での使用を目的とした、防水性に優れた時計。海で泳いだり、大雨に遭ったりしても平気。丈夫な作りはデザイン的にもアピール度は高い。潜水時の酸素残量を知るための逆回転防止ベゼル付きモデルが多い。
GMT 海外への出張や旅行が多い国際派に便利な、第2時間帯がわかる機能。通常のGMT針を使うタイプは時差を1時間単位で示すため、時差が3時間30分のインドや、3時間15分のネパールには対応できない。
永久カレンダー 日数の異なる月や4年に一度の閏年など、手動で調整すべき際も、時計が自動的に修正する複雑機構。パーペチュアルカレンダーとも呼ばれる。クオーツ式には簡単な機能だが、機械式では超高額になる。

クオーツ

水晶振動子(クオーツ)を電池で振動させて、時間を刻む時計

クオーツ、すなわち水晶には、圧力をかけると発電する特性がある(圧電効果)。逆に、交流の電圧をかけると一定周期で規則的に振動する(逆圧電効果)。

これを応用し、通常は1秒間に3万2768振動する水晶振動子の動きを電気信号として取り出し、これを電子回路で1秒に1回のパルス(一定間隔の電気信号)に変換してステップモーターに送信、回転運動に変換して時刻表示に用いるのが、クオーツ時計の原理。

1920年代に開発された当時は、タンスほどもある大型の装置だったが、それが腕時計サイズにまで小型化されたのが、1969年のことだ。なお、一部フランクミュラーはクオーツ式を採用しているものがある。

クオーツ式時計の機能にはこのようなものがある

機能 内容
GPS GPS衛星から位置情報と時刻情報を受信し、船上など電波時計では機能しない洋上でも常に正確な時刻を表示する。とくに、光エネルギーで駆動するソーラー式のGPS時計に人気が集まっている。
電波受信 日本や中国、欧米などの標準電波を受信して、常に正確な時刻を表示する“狂わない"時計。多くはソーラー電池式で、クオーツ特有の機能だが、壊れたときに交換部品がないと修理できない恐れもある。
クロノグラフ 時間を切り取るストップウォッチを搭載。メカニカルな意匠は男性的な魅力に満ちている。お湯を入れて3分、駐車60分など、日頃から活用したい。ただし機構が複雑だからオーバーホール代も高い。
アラーム 目覚まし時計には使えないが、居眠りで電車を乗り過ごすのは防げるくらいのアラーム音量は備える。電子音を鳴らすクオーツ式には簡単な機能だが、金属を叩いて音を出す機械式にとって高度な機能。
ワールドタイム GMTで対応するのは2、3力所だが、ワールドタイムは24時間目盛りと都市名を合わせるだけで、世界主要都市すべてを簡単に読み取れる。見た目が華やかなため、デザイン的にも仕事ができる男を演出しやすい。
ムーンフェイズ 半円形の小窓から、当夜の月の満ち欠けを表示する。ドレスタイプに搭載されることが多く幻想的な雰囲気を醸し出すのが特徴。誤差の少ない高精度タイプや、月齢が南・北半球それぞれに対応した機種も。

機械式とクオーツ式との比較

腕時計の良さは、いまや中身が機械式かクオーツ式かということだけで判断できない時代になりつつある。それよりも、外装の作り込みやコンセプト、トータル的な完成度で評価すべき。とはいえ、あまり知られていないが、クオーツや液晶には寿命がある。

交換部品がなければ、修理不能である。対して機械式時計は、機械部品を交換しながら末永く使い続けることも可能で、工芸品としての価値をクオーツ式に見いだすことは無理がある。だが、クオーツ式にはクオーツのメリットがあるし、その特徴を知ることで機械式のメリットとデメリットも明確に浮かび上がってくる。

機械式自動巻き時計・クオーツ時計のメリット・デメリット

メリット

普通に毎日使っていればゼンマイが自動的に巻き上げられ、時計が動き続ける。電池交換も必要のない、まさにエコ・ウオッチ

デメリット

クオーツに比べ日差は約60分の1.1日に数秒~十数秒の誤差がある。また自動巻き機構のぶんだけ手巻きより複雑になり、厚くなる

クオーツ式時計のメリット・デメリット

メリット

月差プラスマイナス20秒程度の高精度はクオーツならではの長所。また、アナログ式はデジタル式より、瞬間的に針の位置で時刻を読み取りやすい

デメリット

機械式とほぼ同様に、いくつもの歯車を介して動力が伝わるため、デジタル式より衝撃に弱く、機械的な寿命やメンテが必要になる

なぜ機械式時計は高いのか

時計の価格は「機能」「素材」「その他の価値」で決まる!

本格時計に興味を持つと、誰もが価格に驚く。なぜ、こんなに高いのか?まず大前提として、機械式時計を単なる実用品と思ってはいけない。工業製品としては納得できないほど高額な理由は、工芸品としての価値があるからだ。

古来より継承した人類の叡智が内部機構に凝縮され、気の遠くなるような手間をかけて熟練職人がパーツを磨き、ひとつひとつの時計を組み上げ、厳しい品質検査に時間をかける。こうした伝統的な時計製造工程は、現在でも自動化が難しい。高級時計なら一個の時計が完成するのに数力月を要することも多い。

実際に価格を決める要素はいくつかあるが、最も大きな比重を占めるのは「機能」と「素材」だ。機械式時計は高機能になるほど、高い技術が必要になり、職人の手間も増える。そしてケースやブレスレットの素材は、直に価格に跳ね返ってくる。さらには仕上げの美しさ、ムーブメントの完成度やオリジナリティ、ステイタス性も、「その他の価値」として価格に多大な影響を与える。

高額な機械式の機能もクオーツなら安価に実現

多くの機能は機械式でもクオーツ式でも製造可能だが、複雑機構のトゥールビョンや特殊機能は機械式ならではの機能といえる。一方GPSや電波受信ウオッチが欲しいならクオーツ式を探すしかない。

価格の面からみても、機械式時計は機能が複雑になるほど凄まじい勢いで相場が急上昇する。たとえば機械式による機能の相場は、ミニッツリピーターが3000万円クラス、永久カレンダーは400万~1000万円、クロノグラフは30万~80万円、3針カレンダーモデルは5~20万円ほど。これらをクオーツ式で製造すれば、ほとんど30万円以内で購入できる。高度な機能ほど、機械式とクオーツ式では価格が拡大する