All about FRANCK MULLER
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創始者のフランクミュラー氏は独立時計技師としてデビューした後、1986年に世界初となる腕時計のトウールビヨン、翌年にはミニッツリピーター付きのトウールビヨンを発表し、いちやく時代の寵児となった。
1992年のブランド設立後も、トウールビヨンを基本として、複雑機構を搭載したグランドコンプリケーションへと展開していく「エテルニタス」シリーズを筆頭に、数多くのコンプリケーション時計を手がけてきた。そして、いつの間にか「マスターオブ コンプリケーション」という時計の名手を意味する言葉が彼の呼び名となり、自然とその称号が時計のケース裏に刻まれるようになった。
しかしながら、フランクミュラーの「マスターオブ コンプリケーション」は、ただ単に内部機構が複雑なものを意味するものではない。フランクミュラーにとってそれは、究極に突きつめられた形状と構造が、相互に融合しあうことを指す。「形状」「構造」という2つの要素を合理的に重ねあわせ、他にはない美しさを表現することを究極の美としているのだ。
あらゆる要素を兼ね備えた時計は正確な時を刻みつつも、非日常的な感覚を呼び覚まし道具としての時計を超える。特別な魅力を放つ存在が、着用者の生活をより豊かにするものであってほしいというフランクミュラーの願いが、そこには込められている。
精緻な機構とともにフランクミュラーの個性を際立たせる外観。その象徴となる美しい3次元曲線は、ブランド誕生前にすでに完成していた。
フランクミュラーが顧客のオーダーによって時計を製作し始めたのは、時計学校を出てすぐの20代の頃。ジュネーブの時計学校を非常に優秀な成績で卒業した彼は、複雑機構を得意とする気鋭の独立時計師として、早い段階からヨーロッパ中の時計コレクターから熱い注目を浴びていた。
そんな折ある時計コレクターから、時計のムーブメン卜は称賛に値するが、デザインに個性がないということを指摘された。この指摘に刺激を受けたフランクミュラーは次第に時計のデザインに注力することになり、外観の美しさこそが腕時計のデザインに必要な要素という結論にたどり着く。そこで様々な試行錯誤を重ねて編み出した集大成が今もなお人気のモデルである「トノーカーべックス」であった。
トノーカーベックスで使われているトノー型自体はフランクミュラーが開発した新しい型ではない。この形状は、1920~30年代のアールデコデザインが全盛時代に角型の時計において人気のあった形状である。この形状は従来のケース全体を緩やかに湾曲させ、腕に着用した際に時計が浮かないよう実用性を高めたもので、当時は高級時計の典型とされていた。そして、このトノー型の形状に造詣の深いフランクミュラーが目をつけたのだ。
もちろん、フランクミュラーは従来のデザインを使うわけでなく、トノー型の魅力を踏まえたうえで3次元曲線という大きく異なる要素を組み合わせて格段に進化させた。
それまでの腕時計は12時位置と6時位置を軸に湾曲する2次元曲線で構成されていた。一方でフランクミュラーが手掛けたトノー型は、球面を3本の曲線によって構成することで、縦横斜めのどの位置から見ても必ずカーブ面が接する唯一無二の形を生み出した。もちろん、それはケースだけでなく風防も同様に三次元曲線で構成されている。
3次元曲線による優美な「トノーカーベックス」は、92年にシリーズ化されるとともに、たちまち多くの人々を魅了。フランクミュラーブランドを象徴するケース形状となる。その形状は「カサブランカ」「マスターバンカー」「クレイジーアワーズ」といったフランクミュラーを代表するモデルにも取り入れられてきた。
2000年にはもう一つの人気シリーズ「ロングアイランド」をリリース。このモデルは長方形の形をベースとして、こちらもトノーカーベックス同様に着用感を考慮した形状を採用している。ロングアイランドは3次元曲線のトノーカーベックスほどではないが、カーブを多用しつつ、長方形という形状が生み出す直線がシャープな味わいが魅力だ。このロングアイランドにも文字盤がカラフルな「カラードリーム」などのモデルが存在する。
そして、トノーカーベックスからロングアイランドに継承された曲線美は、フランクミュラーを代表する3つ目の形である「ヴァンガード」へと進化していく。
フランクミュラーが20代の若き独立時計師時代に唯一製作したオーダーメイド時計のスタイルとして誕生した「トノーカーベックス」。一番の特徴は3次元曲線によって創造された立体的な形状。時計本体上に同じ曲線が存在しないスタイルが他にはない美しさを生み出す。ブランドが誕生して以来、基本ラインとして現在にまで君臨する。
縦長のモデルがロングアイランド。特徴は3次元曲線によって成り立つ立体的なフォルム。トノーカーベックスとは異なる曲線美を持つすっきりした形状が多くの人の心を魅了する。典型的なアールヌーヴォー様式のデザインを蘇らせながら、スタイリッシュな感覚も併せ持つ。
トノーカーベックスやロングアイランドの伝統を受け継いだフランクミュラーの新しい形状は「ヴァンガード」。このモデルの大きな特徴はその大胆なデザイン。ケースサイズは普通のモデルに比べて非常に大きいだけでなく、ケースとストラップが一体化し、一般的な時計に使われているラグというものがない。
外観で印象的なものはケース形状だけではない。ケース側面に施されたチタン製のインサートも非常に印象的。さらに文字盤上のインデックスは、これまでフランクミュラーで使われていたビザン数字とは大きく異なる新たなフォントが使用されている。フォントは中抜きされたデザインで、外縁のみが立ち上がっているのが特徴。
時間を指し示す針もヴァンガードは独特。極太のスケルトンタイプのものを使用。他にも、外周はコンパス仕様。表面仕上げはフランクミュラー定番のギョウシエではなく、黒のヘアライン加工なので他のフランクミュラーのモデルとは大きく印象が異なるのも特徴的である。これらの要素をまとめ一言でこのヴァンガードを示すならモダンかつスポーティ。
ヴァンガードの大ぶりな外観は「コンキスタドールグランプリ」と同様なものと思われがち。ただ、ケーススタイルは大きく異なる。「ヴァンガード」が採用するのはあくまでフランクミュラーの代名詞であるトノー型。「トノーカーベックス」同様、曲線を活かした優美なフォルムで仕上げられている。
しかし、トノー型とはいえ3次元曲線は使わず、「ロングアイランド」のような2次元曲線を使うことによって、それまでのトノー型の優雅なモデルとは異なり、どちらかといえばスポーティーでスタイリッシュなイメージを作り上げている。
大型なので着用しづらいと思われがちだが、ケース全体が湾曲するカーベックス形状のため、大型サイズでも着用感は問題ない。つまり「トノーカーベックス」と「ロングアイランド」の両方のメリットを兼ねそろえているともいえる。
フランクミュラーを選ぶ際において難しいのはそのモデルの多さ。「カサブランカ」や「ロングアイランド」などの大分類はあるが、その中でも文字盤やケースサイズから装備まで、非常に多種多様なモデルが存在しているのがフランクミュラーの特徴だ。というのも、フランクミュラーのそれらのモデルは大量生産ではないため同じ仕様になっているものは少なく、一つ一つが高い希少価値を持つ。
3次元曲線が特徴のトノーカーベックスはレディースからメンズまで10サイズ、ロングアイランドやマスタースクエアも6サイズずつ揃っているなど豊富なサイズが揃っている。これは他の時計ブランドではあまりない充実ぶりといえる。もちろん、フランクミュラーのこだわりはこれだけではなく、ケースサイズの数だけ文字盤のサイズが存在しており、文字盤の大きさに合わせて針も製作しているほどのこだわり。
サイズ以外にも、色、形状、仕上げを含めれば非常に多くのタイプが存在している。また、各ケースはサイズごとにラグの付け幅も違うので、それぞれに最適化されたストラップと尾錠、ブレスレットか用意されており、これらもサイズや素材、色が豊富に存在する。さらに、リューズやビスといった小さな部品に至るまで、全てのモデルやサイズで部品の使いまわしは行わず、一つ一つモデルごとに作り上げられている。
この細部までのこだわりによって、フランクミュラーは非常に多彩なモデルを有している。それぞれが異なる仕様、装備のため、大量生産の品にありがちな同じモデルで重複することなく、自分にとって最適な1本が見つかるだろう、
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